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PING G430 / MAX 10K

2024年1月10日午後、PING社のG430 MAX 10Kの発表会が開催された。上下合わせての慣性モーメントが10000g/㎤越えを世界で初めて達成したニュードライバー発表のために、マスメディア各社が取材のために寒さ厳しい都内の某所にて集結した。しかし実はその数時間前、同日の午前中においてTaylorMade社が同じく慣性モーメントが10000g/㎤越えの新製品「Qi10」を発表していたのだ。10000g/㎤越えとなればキャッチコピーとしての効果は絶大なはずでその利益を2社で共有したのは興味深く、2社の間に何らかのコンセンサスがあったことは想像にたやすい。

それはさておき、このPING G430 MAX 10Kはどのような特徴と実力をもったドライバーなのだろうか。以下に設計上の特徴を箇条書きにした。

カーボンフライ・ラップ・テクノロジー

まず最も慣性モーメント向上に寄与しているものはカーボンフライ・ラップ・テクノロジーと呼ばれるクラウン部を覆うように設計されたカーボンクラウンである。これはG430 MAXでは採用されておらず、G430 MAX SLTからの採用である。この新構造によりさらに低重心化と自由な重量配分を実現した。SLTではヘッド体積が440ccであったために慣性モーメントは10000越えとはなっていないが、今回満を持して460ccでの製品化となった。

さらに大きくなった投影面積

G430 MAXに比してフェースをさらにシャローにしたことで、ヘッドのトゥ-ヒール部(縦)を1%、フロント-バック部(横)を2%長くした。G430 MAXも大きかったが10Kはさらに大きくなっている。エアロダイナミクス低下における抵抗感、風切り音は少し大きくなった印象。

さらに薄くなったフェース構造

もはや新しさはないが、PING独自の熱処理によって強度やたわみを最適化したT9S+チタンフェースを使用、G430 MAXに比べて10Kは中心部を4%、周辺部7%薄くも設計している。これらの設計はPING社が謳うスピンテンシーテクノロジーと密接に関係している。

近年のPING社のドライバーは、ツアープロの評価のみならず、アマチュアの使用率などを見ても、US市場、日本市場において最も安定した性能を提供するドライバーであることは揺るがないところである。ここ数年のPING社のドライバーは、一発の飛距離は他社に後塵を濁すものの、競技で使用できる安定性、フェアウェイキープ率、飛距離のばらつきの少なさなどについて近年のゴルフ市場において最も信頼性が高いクラブの一つとされている。PING社は、前作のドライバーよりも良い製品が開発できなければ新商品は発売しないというプライバシーをこれまで貫いてきた。しかしこの10Kは、設計やコンセプトを見る限りはG430シリーズの最新作ではなく、これまでのG430シリーズの追加バージョンである。つまりG430 MAX、SFT、SLTが示す特徴で補填できていなかったプレイヤー層にターゲットを合わせている。それは決してアマチュアのみというわけではなく、ツアープロでも同様である。その証拠に発売して半年ほどした現在、使用するツアープレイヤーも徐々に増えてきている。

MAX 10Kについて、MAXと最も異なる点は、慣性モーメント10000g/㎤越えを達成させるため、ヘッド後方のウェイトを固定式に変更し、設計上最も後ろに、しかも低く配置したことである。クラブの設計上、重心がより後ろに、慣性モーメントが大きくなれば必ずスピン量は増える。しかしMAX 10KはMAX SLTと比べてもほとんど変わらない程度に低スピンを維持したことはPING社の企業努力の賜物である。

少しだけ残念なことに、ヘッド重量を落としたHLは当然のことながら慣性モーメント10000g/㎤を下回ることは言うまでもない。それにも関わらずMAX 10K HLと銘打って販売してしまったために、余計なコストのかかる無償交換プログラムを全世界で発表せざるを得ない事態に陥ってしまった。( https://clubping.jp/news/2024/pingnews240627.pdf )現在は、MAX 10K HLはホームページ上で削除され、発売も中止となってしまった。もはや中古市場にしか出回っていないため、今後中古市場では争奪戦となりそうである。性能としては最も秀でたモデルの一つであることは変わらない。ネーミングを変えて市場に早く再登場することを待つばかりである。

打感については、カーボンクラウンの比率が大きくなり、G430MAXに比べて少し大きくなった。これは練習場で周りの反響音が大きくサウンドがボケる状況の比較ではほんのわずかな差であり気が付かないほどであるが、実際にコースに出て、コースボールを打ってみると少しだけ鈍く、柔らかく、低くなっていることに気がつくだろう。どちらが良いか悪いかは好みが分かれるところである。

エアロダイナミクスについては、元々G430シリーズは(クラウン部のタービュレーターなどで最大限の努力を差し引いても)空気抵抗の軽減性能はもう一つといったところであったが、今回さらにヘッドの投影面積が大きくなりシャローフェースとなったことで決して改善していないことを付け加えたい。これはアマチュアゴルファーにはあまり影響はないもののプロプレイヤーのスイング中のフィーリングには影響を与える可能性がある。

シャフトについて、日本でのMAX 10K発売においては、基本のスペックはALTA J CB BLACK、PING TOUR 2.0 CHROME、PING TOUR 2.0 BLACKの3種類となる。注意すべきは、ALTAのシャフトに関して、本場USでのシャフトラインナップは日本のものよりも2〜7g重い設定となっていること、日本向けラインナップでは後者2シャフトはそれぞれ65、75g台の2種類のシャフト重量をラインナップさせていることは注意すべきである。

また注意点としては、純正の一番軽いALTA J CB BLACKを装着しても総重量は300を超えてしまう。このドライバーを使いこなすにはある程度の体力を要することを付け加えたい。

まとめ

簡易的であるが、どのG430シリーズを購入したら良いかわからないがフィッティングする時間もないゴルファーのために、簡易的なG430シリーズの特徴をグラフ化したので参考にされたし。

冒頭のタイトルに冠したように、このG430 MAX 10Kを一言で言い表すとしたら、これまでのG430シリーズの穴を埋めたマルチフィッティングドライバーと言えよう。さらに全ての総合的な性能を現段階で出来るだけ高めたモデルでもあり、このドライバーは「買い」である。元々PING社のクラブはフィッティングを前提としており、あれこれとゴルフの道具に悩むユーザーの利益を純粋に追い求めている。「マン振りでマン飛び」というチープなキャッチフレーズも何ともユーモアがあり面白いと感じてしまう、それだけ完成度の高いドライバーである。

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