X-DRIVEシリーズの２０１２-２０１３モデル。ブリヂストンは７０９D４３０と　７０９D４５０、それと９０９の３シリーズを主要モデルと位置づけており、９０９のみ限定発売品としている。
フェース、クラウンともに２ピース構造でそれぞれ硬度を変えているのが最も大きな特徴であるが、それは各メーカー共にすでに取り入れているので特に目新しさはない。
また純正スペックにグラファイトデザインと三菱レイヨンを採用している。

プロによる試打では一球目から「お、これは飛びそうだな」という力強さが感じられた。ボールの質は重くすっと前に出る感じでぐんぐんと前に向かう。
フェースの反発力も高く、GST計測でも1.4を切ることは殆どなかった。（コースボール計測）
上級者好みの飛び方でコースマネージメントしやすい。RatingGateプロスタッフもコースを飛ぶボールを見て満足そうである。

ヘッド自体は大きな癖が無く上級者であるほど扱いやすい。４３０ｃｃというヘッド体積はやはりそれなりに難しさを見せるものの芯を外しても思ったより大きく曲がることはなかった。安定したヘッド挙動がクラブの易しさを底上げしてくれているかのようである。

操作性も及第点に達する。もともとボールの質が重くトゥでもヒールでもギア効果が良く働く。
ただ、スライスボールでは少しボールの質が軽くなる度合いが強めであるので、ボールをカットするとフェースが上を向いてしまうプレイヤーは大きく飛距離を落としてしまう。

フェースアングルはフックにもスライスにも調整可能である。ストレートに設定すれば上級者が見ても決してかぶっては見えない。
ソール部中央を縦に走るブリッジのお陰で実際にソールすると少しコロコロとヘッドが動いてしまいそうになるのが残念である。

ツアーステージらしい柔らかさであるが少しガッチリするような芯も通っている音がする。ヒールに当たっても手が痺れるような嫌な感触は残らないのが印象的。
RYOMAのようなブヨンとしたゴムのような感触が好きな人には少し硬く感じるかも知れない。

X-DRIVE９０９のように厳密に打ち手を選ぶわけではなくある程度練習量を確保出来るプレイヤーであれば使用は可能であろう。
目安としてはHS43m/s〜。飛距離を最優先するのであれば無理にこのクラブにする必要はない。

純正タイプのシャフトは4種類がラインナップされているが、どれも大人しい雰囲気の味付け。（ディアマナは試打していない。）
ヘッド自体のバランスが良いためあまり相性のシャフトは思いつかないが、バリアブルアジャストシステムなる調整機能付きのヘッドのために簡単にリシャフトできないという欠点もある。ただし前作（７０７）からのシャフトも装着可能である。
どちらにせよもう少しメーカーでカスタムシャフトを表示してもらいたいところである。

飽きの来ないデザインで上級者には好感が持てるだろう。黒、白、赤の組み合わせはスリクソンも同じで見慣れているが、ロゴのヘッドデザインがシンプルで嫌みが無い。
塗装は相変わらず丁寧である。

※飛距離の基準について

 H/S 42m/s以下の方

 H/S 43〜46m/sの方

 H/S 47m/s以上の方

※Fitting Mapでは、各要素のが縦に一直線に並ぶほどバランスが良い設計とみなされます。

試打を行った時、プロスタッフの一人が嬉しそうにソールを覗き込んだのが印象的である。今までゴルファーの憧れであったツアーステージが帰ってきたからであろう。
癖が無くスイングに忠実なボールを何度でも再現してくれる、そんな良クラブである。この７０９D４３０であればきっと練習も嘘をつかないのだろうと思う。
何度も言及している通りツアーステージは目先の利益のために方向性を見誤った時期があり、未だにそのダメージから脱却出来ずにいる。しかしこのヘッドがそのベクトルを修正してくれるきっかけになるかもしれない。今後の開発に期待したいと思う。
ちなみに９０９はどうしても右に行かせたくない上級者専用モデルであるが２０００本限定というのが気に喰わない。クラブの性能とは関係ないところで販売促進をする手法にはユーザーはうんざりしかねない。