見た目や打感はどうでも良い、とにかく良く飛んでまっすぐ行けばそれでOKという極みの設計である。
ヘッドの慣性モーメントは世界最大級の3000g・cu、世界最大級重心アングル19.6度、重心深度8.93mm(従来比218%)と、現存のアイアンの中ではチャンピオンデータを持つ。
また素材にはマレージングとタングステンを使用したり、カーボンシャフトにも専用設計を施したりして、基本性能の底上げを図っている。
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番手ごとの飛距離性能は極めて高い。実際の試打では7Iで170ヤード以上もキャリーしてしまった。これはもちろんヘッド性能ではなく超ストロングロフトによるものであるが、高さも十分出ている為それほど違和感はない。
また、ボールの回転数も低く、常にフライヤー気味の弾道でキャリー自体が伸び、さらにランも稼ぐ。暴力的な飛距離性能と言ってよいだろう。
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まず、滅多な事ではスライスボールは出ない。専属プロもかなりアウトサイドからボールをこすってみたが、申し訳程度のフェードボールになるだけで、大きなブーメランボールにならない。
イメージとしては、フェースがローリングしてボールを捕まえるのではなく、単純にヘッド軌道に対してフェースがストレートにかぶってインパクトするという感じ。つまり打ちだしはストレートに出やすい。
ボールの軌道としては、まっすぐストレートに打ち出してフックするか、左に打ち出してそのまままっすぐ飛んでいく事が多く、ボールの打ち出しが右に出てそのままスライスするような球は殆ど出ない。
スイートスポットもかなり広い。現在のテクノロジーではこれ以上は望めないだろう。
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全く期待していなかったこの操作性であったが、実は思ったよりも酷くない。
普通はこれだけ低重心、深重心であれば、ボールを横から払って打たなければインパクトポイントと重心位置が直線状に重ならない為、芯に当たることがない。
しかし良く研究されたグース設計と、類まれなスイートスポットの広さによって、ボールを上から打ちこむ事が出来、打感も払って打った時と比べてあまり違和感が出ない。驚くべきことに上級者が打てばかなりボールの回転を抑えた低いボールを打つことも可能な様である。
ただ、前述したようにスライス回転は大の苦手であり、ボールの回転数も低いために常にフォロー風の中で打ったような、「曲げたくても曲げられない」感覚は強く残る。
さらに、ショートアイアンでもなかなかボールは止まってくれない。キャリーしたあともコロコロと転がって、グリーンの奥にこぼれるような結果になることも多い。
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まあ実際に構えてみると何とも酷い。これがアイアンの形状と言えるのかどうかも疑問であるが、まあ元より設計の段階で開発者も理解していた事であろうから、我々がどうこう言うことは無粋というものであろう。
グースに関しては、曲線によってラインを形成しているので、より直線的で感性を感じさせないキャロウェイやピンなどよりは若干ましであると思う。
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打感、打球音については、硬い、鈍い、く球離れが早いと、3拍子揃ってしまった。HP上にもこれらに対するアピールポイントは一切なく、メーカーも全く気にしていないことがわかる。
もともと打感に喜びを見出すプレイヤーは絶対的にこのアイアンを使用することはない。これで良いのである。
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RatingGateの専属プロはヘッドスピード47〜48m/sであるが、それでも十分パフォーマンスの高さは実感できた。女子プロもしかりである。
ただ、やはり最もお薦めするのは飛距離に悩むアベレージヒッターや、殆ど練習場など行くこともないエンジョイゴルファーであろう。
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純正シャフトはカーボン仕様のみ。特に大きな癖はなく、あまりストレスは感じない。その代わり特別何かに秀でているという印象でもない。
調子は明記されていないが、感覚的には典型的な中調子である。
一点注意が必要なのは、フレックスが少し硬めであるということ。これは、大きい慣性モーメントを生かす為には多少の剛性感は必要であるということであろうが、ヘッドスピードの遅いプレイヤーはパフォーマンスを発揮出来ない可能性がある。
毎回の事だが、リクエストが多い場合はカスタムシャフトも紹介するが、現時点では特に推薦等は行わないこととする。
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ヘッド形状が特殊でアイアンなのかユーティリティなのかさえ分からない程であるので、デザイン性についてあれこれと議論する有意性もないかも知れない。そうは言っても一般的には比較的まとまりのあるデザインで、思ったよりもスタッフや一般ユーザーの反応も悪くない。
塗装に関しては並であるが、特に雑に作られているという部分も見当たらない。実際に長い間使いこんでいるクラブもチェックしてみたものの、大きく質感を損なう事はなかった。
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