ドラコン選手権で一躍有名になったマスダゴルフのVシリーズ。その設計の根底にあるのはセンターバランス理論である。
ヘッドにおいて、その重心位置をよりセンターに近い適正な位置へ配置することで理想とするヘッドの動きが実現できるというもの。現代の主流となっている深重心、低重心における弊害を指摘し、自然なリストターンを促す設計となっている。
HPでは詳しい設計上の説明は見いだせないが、大手メーカーとは一線を画した独自設計は市場でも一定の評価を得ている。
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今回は大手メーカーのドライバーではないため、一般ユーザーの評価は集まりにくい状況であったが、RatingGateスタッフプロが詳細にデータを収集し、正確な情報の解析に努めた。
結果として、飛距離性能は高くない。メーカー側では特に表記はしていないが、相当のハードヒッターでなければ満足する飛距離性能は得られないだろう。
少なくともRatingGateスタッフプロの45~48m/s程度では、良い結果は得られなかった。ヘッドのリアルロフトに対してボールの回転数が多い事と、スイートスポットが狭くてなかなか芯に当たらない事で、何球打ってもビッグボールは得られなかった。一般アマチュアが打ったとしたら、さらに顕著な結果となってしまっただろう。
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ヘッド体積は430ccで、上級者をターゲットにしている事に加え、設計上の弊害からだろうか、スイートスポットが狭い。あくまでも感覚だが上下左右に5mm外れるだけで大きく飛距離を損なうようなフィーリングである。
ボールのつかまりも悪くコースでは一球一球に神経を使いそうである。難易度としてはキャロウェイ社のレガシーツアーに匹敵するほどで、しかもヘッドスピードが遅くなればなるほど難易度は2次関数的に上昇すると考えれば良い。
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メーカーではスピンコントロールの重要性をあげ、ほとんどのプレイヤーが無意識で行っているスピンコントロールを意識的に行えるような設計を施しているようである。
しかし実際は通常のヘッドスピードでは球離れが早く、自分の意思をボールのスピンに反映出来るようなインパクトではない。(逆にヘッドスピードが極端に速い場合は適度な球の食いつきが得られるのかもしれない。)
またヘッドのリアルロフトに対してスピン量が多く、シャフトやスイングで余剰な回転数を抑えなければならない。
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実際に構えてみると、基本的にはツアーステージのような丸型タイプであるが、その中にも若干ではあるがタイトリストの様な縦長の雰囲気がある。どちらにしても上級者好みの良い顔つきである。
メーカーいわく、まっすぐにバックスイングし、なおかつその再現性を高めやすいようなヘッド形状だということであるが、まさに同感である。すっと違和感なくスクウェアにバックスイングを開始出来そうである。
USメーカーにはどうしても出せないような日本人が設計した独特な審美眼が息づいている。
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平均的なヘッドスピードのプレイヤーにはどうしても硬く感じてしまう。良い言い方をすればがっちりとヘッドとボールが噛み合う感覚であろうか。
正直な感想ではあまり打感、打球音のことは考えずに作ったのではないか。打感向上の為にSP700を使用しているというが、それでこんなもんかという印象。
また、イレギュラーな方法なので特に推奨をしていないが、ソールの大きなウェイトを外すとヘッド内部に通じるのでそこからゲルを装填することも可能である。熟練技術が必要なのでメーカーに問い合わせると良いだろう。
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メーカーは特に推奨ヘッドスピードを明記していないが、少なくとも45m/s程度ではヘッド性能を発揮できない。
さらに、ヘッドスピード55m/sを超えるテスターがRatingGateスタッフプロにもいない為、この領域の適応性については言及を控えたい。
ただ、もしこのようなゴリラ級のプレイヤーがドラコン目的でこのヘッドを使用すれば結果は変わってくる可能性もある。逆にこのくらいハードなヘッドでなければ有り余るパワーを全てヘッドからボールにロスなく伝えることが出来ないのかもしれない。
事実、今回のこの評価にも関わらず、ドラコン選手権では高い使用率を誇っているのは事実である。
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メーカー純正は3スペック。最軽量モデルのメモライズM04については試打を行っていないため分析対象には入っていない。残りの2スペックについてはどちらもハードヒッター向けであるが、共にヘッドとの相性が抜群であるとは言い難い。
もともとヘッドだけでも購入できるクラフト的な地クラブであるから、それで良いのである。クラブ制作に精通している職人と綿密に話し合い、各自にフィットした仕様に組上げれば良いだけである。
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